引用元: 「∧∧∧山にまつわる怖い話Part19∧∧∧」より
http://hobby7.2ch.net/test/read.cgi/occult/1113524875/
586: 全裸隊 ◆CH99uyNUDE 2005/05/23(月) 06:32:49 ID:fBqbyjb30
日中の陽だまりが、まだそこに残っているような斜面だった。
おおらかに藤の木が枝を広げ、薄紫の花が房を作り、ふわりと宙に
浮いているように見えた。
斜面はそのまま、静かな淵に落ち込んでいて、奇妙に優しい空間が
その場を満たしている。

時刻は夕方、そろそろ今夜の寝床を決めたい時間だ。
できれば、こんな気持ち良い場所で。
行き当たりばったりにテントを張って山を歩いていると、気持ち良い
場所というのは、案外、少ないものだと思い知らされる。
思い知らされるからこそ、こんな場所で一泊したくなるのだ。

風が木漏れ日をすくい上げ、淡い光の粒を藤の花に差し出した。
差し出された光を受け止めた藤の花が、ほんの一瞬透き通り、
ふくれたように見えた。
香りが散り、花が笑った。
いや、花に顔などあるわけがない。
あるわけないが、それでも、他に言いようがない。
藤の木が、全身を揺らして歓喜していた。

587: 全裸隊 ◆CH99uyNUDE 2005/05/23(月) 06:33:53 ID:fBqbyjb30
とてつもなく奇妙な光景を目にしている事に、ふと気付いた。
「ねえ、ここで咲こうよ」と、子供の声。
「ぼくはもう、10年も咲いてるんだ」
「淵に入ればね、来年から咲けるよ」
奇妙なのは、目に映る光景ばかりではないらしい。

それでも、この場所で藤の花になって毎年咲くという考えは
悪くない。
悪くない考えだが、突拍子もない。

風が斜面を吹き抜け、ふたたび光を散らし、
やがて日が暮れた。

「いつか、本当に咲きたくなったら、また来るよ」
翌朝、そう声をかけ、歩き出した。
藤の花は何も答えない。

588: 本当にあった怖い名無し 2005/05/23(月) 06:55:50 ID:Isxxyahn0
>>586
肯定的な感情溢れる風景の中に差す死の暗示、見事です。
読み終わると窓から差し込む眩しい朝日が雲で少し陰りました。

589: 本当にあった怖い名無し 2005/05/23(月) 06:55:56 ID:GlXna+CWO
藤の花はスゴく良い匂いなのだ(・∀・)
乙!

590: 本当にあった怖い名無し 2005/05/23(月) 08:49:42 ID:KyIUU+Ai0
全裸隊様乙!!
今回はしみじみと考えさせられました

588さんあなたの感想素敵です
今回の話に似合いすぎ

国語力がない自分が悲しい・・・・

591: 本当にあった怖い名無し 2005/05/23(月) 09:54:14 ID:6VUDO81V0
>>586
平らで水平で乾燥した場所がありがたい。
シートを敷いても石がごつごつ背中にあたるような場所では
安眠できん。

誘いはしても無理矢理引っ張り込むような真似はしなかったのが
乙。

592: 本当にあった怖い名無し 2005/05/23(月) 09:57:27 ID:LT/vVqMz0
すばらしい。
でもこれを書いている人の名は「全裸隊」なのだと思うとつい… スマン、ワロテシマウ

593: 本当にあった怖い名無し 2005/05/23(月) 12:48:59 ID:pCTiIXT30
>>592
そう思うならオールヌードファイターズとか脳内変換汁!

594: 本当にあった怖い名無し 2005/05/23(月) 13:59:26 ID:LSraHRxA0
半裸より全裸だ

596: 本当にあった怖い名無し 2005/05/23(月) 14:50:53 ID:rGFq4ZSU0
全裸隊さんは誰かの声を聞いても、そこにキャンプしたのですよね?
それもコワヒ…

597: 本当にあった怖い名無し 2005/05/23(月) 14:56:18 ID:i8ADRywbO
>>596
しかも全裸でな。

598: 本当にあった怖い名無し 2005/05/23(月) 17:22:26 ID:71QwkqWK0
だから藤の花はなにも答えなかったのか

599: 本当にあった怖い名無し 2005/05/23(月) 19:43:11 ID:y98lYPTt0
藤の花「今日はだれか来るのかなあ。今年はまだ誰も来ていないしなあ。
    できれば素敵な男の人だといいな。早く来てくれないと、あたし散ってしまうから…」
花の子「おねえちゃん、若い男の人が来たよ。それも何人も。みんな親切そうな人だよ。」
藤の花「えっ、嬉しい。どんな人かな…って、きゃあ、あの人達、みんな真っ裸じゃない!」
花の子「でも悪い人達には見えないよ。ぼく遊んでもらってくる。」
藤の花「ちょっと止めなさい!ああどんどん近づいてくる。こっちに来ないで、恥ずかしい…。」
花の子「ねえ、ここで咲こうよ」
花の子「ぼくはもう、10年も咲いてるんだ」
花の子「淵に入ればね、来年から咲けるよ」
藤の花「ああこっちに来ちゃった。きゃあお願い触らないで。まだ心の準備が…考えたらあたしだって
    服なんか着ていないし、もうまともに見られないよう。ああっ顔を近づけちゃだめだって。
    そんなことされたらあたし、あたし…散っちゃう、散っちゃうよう。うわあっっ!!
という訳でその年からその山の藤は赤い花を咲かせる藤として有名になりましたとさ。
全裸隊さん、あなた方のせいですw

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