引用元: 「ほんのりと怖い話スレ その60」より
http://anchorage.2ch.net/test/read.cgi/occult/1251297475/
420: 1/5 2009/09/07(月) 12:59:48 ID:Q1v71Dj+0
8月初旬、夜中に我が家の次男15歳がリビングでいきなり歌い出し、
私も主人も長男17歳もびっくりして飛び起きました。
主人が「コラ!夜中だぞ!!」と言い、電気を点けました。
マンション住まいなもので、深夜の騒音は大迷惑になってしまいます。
長男も次男も小学生の頃から和太鼓をやってるのですが、
そのとき次男は舞台で着る藍染の腹掛けと股引き、頭にはちゃんと
鉢巻を巻き、ご丁寧に地下足袋まで履いていました。
歌っていたのは三宅島に伝わる『木遣り歌』です。
『三宅木遣り太鼓』は三宅島のオリジナルにアレンジが加わった形で
和太鼓の曲として広く伝わるスタンダートです。
次男の所属するチームでは『三宅』を叩く前に『木遣り』を歌うことが
あるのです。

次男は、主人と長男で取り押さえようとしても構わず歌い続け、
主人が口をふさいでもまだもがもがやっています。
寝ぼけてるのかと思い、名前を呼んだり揺すったりしてもダメ。
「ダメだ、とりあえず外に出そう」と、次男にタオルで猿轡をし、
主人と長男が引きずってエレベーターに乗り、駐車場に走りました。

急いで車を出し、次男はまだ歌い続けていましたが
騒音を気にしなくてよくなったことに、とりあえずはホッとして
猿轡を解きました。
成り行き上ハンドルを握っていたのは私でした。
どファミリーなミニバンのセカンドシートに170、175、178cmの男が3人
ぎゅうぎゅうに収まって・・・。
あたふたと夜逃げのように飛び出てきてしまったので
私はパジャマ、主人と長男はTシャツにトランクス1丁。

421: 2/5 2009/09/07(月) 13:01:00 ID:Q1v71Dj+0
どこへ行けばいいのか、どうすればいいのか、何が原因なのか、
思いつく限りの意見を出し合った末、主人が言いました。
「病院だな・・・M(長男)、夜中もいける精神科、検索してくれ」
『精神科』という言葉にちょっとドキッとしました。
「携帯持ってこなかった・・・」「俺も・・・」「私も・・・」
「とりあえず携帯と着替えを取りに帰るぞ。俺らは下で待ってるから
 Mは家へ走って取ってこい」
主人の言葉に長男もそれしかないと観念し、
「家まで誰にも会いませんように・・・」とつぶやきました。

その時、主人がぼそっと言いました。
「こいつ、いつからこんないい声出るようになった?」
私は次男の異常な様子が心配で、ただオロオロしていましたが、
主人に言われてよく聞いてみると本当に心に染み入ってくるような声でした。
確かに次男の声なのですが、何と言うか・・・伸びだとか節回し?が
急にうまくなっている感じでした。
それからもしばらく歌い続けていましたが、ふいに次男の歌がやみました。
「R(次男)!?」名前を呼んでみましたが無反応。
きりっとした顔のまま正面を見据えています。
かと思ったら、すっと自分の手を見て握ったり開いたりし始めました。
「バチ!これから打つんだ!」
長男が叫びました。
「バチも持ってこよう!」
みんな口には出しませんでしたが、何か科学で説明できない事態が起こってると
このあたりから感じていました。
主人「M、塩も持ってこい」、長男「塩・・・どうするか知ってんの?」
主人「かけたらいいんじゃないか?」、長男「まじかよ・・・」
主人「コンビニで線香も買おう」、長男「コンビニで売ってんの?」
沈黙・・・。
ものすごい不安ではりさけそうでした。

422: 3/5 2009/09/07(月) 13:02:05 ID:Q1v71Dj+0
マンション前に着き、長男が意を決したようにTシャツトランクスで
走っていきました。
その後ろ姿に緊急事態の真っ只中だというのに主人がゲラゲラ笑い出し、
私もつられて笑いました。
「よく考えたらめちゃくちゃ笑えるな、これw」
Tシャツトランクスの父と長男が、ばっちり衣装の次男に猿轡をかませて引きずり、
付き添うパジャマの母。
「ものすごい怪しい家族だぜw」
笑いがとまらなくなってしまいました。
すると、それまで険しかった次男の表情が少し柔らかくなった気がしました。
主人は「大丈夫。とにかく今は深夜だし、朝になったら考えたらいい」と
何か達観したような様子でした。
もちろん不安でいっぱいでした。
このまま本来の次男が戻ってこなかったら・・・と思うと、
こちらの方がおかしくなりそうでした。
それでも一瞬和ませてくれた主人にとても感謝しました。

しばらくして長男が荷物を持って戻ってきました。
「まだバチ出すなよ。ここでやられたら殴られる」
主人がジーンズを穿きながら言いました。
私は助手席に移動し、主人の運転で再び走りだしました。
「Rの部屋に入ったら、Tシャツキレイにたたんで置いてあったよ。有り得ねぇ」
長男はそう言いながら携帯で塩の使い方を調べていた。

423: 4/5 2009/09/07(月) 13:02:59 ID:Q1v71Dj+0
思いがけず久しぶりに家族(+1?)でドライブとなりましたが、
ある国立公園にたどり着きました。
我が家からは30分ほど山に登ったところにあり、ちょっと名の知れた滝や
秋は紅葉目当てで観光客がやってくる自然の中です。
もちろん、そんな深夜ですから駐車場に他の車はありません。
まずは主人と私が車を降り、次男も長男が促すと降りてきました。
長男が次男に持ってきたバチを渡し、自分もバチを持ち、
滝の音がゴウゴウと遠くから聞こえる方を向いて立ちました。

まず長男が歌い出しました。
それに次男がかぶせるように追いかけます。
歌い終わると長男はすっと座り、次男は腰を低くして構えます。
『三宅』は太鼓を真横に置いて、両側から低い姿勢で打つのです。
長男の地打ち(ベース)が始まり、次男がゆっくりと振りかぶり打ち下ろす。
もちろん太鼓はありませんが、ドーンという響きを感じたような気がしました。
だんだんとペースが上がり、お互いに掛け声をかけながら、エア太鼓は続きます。
長男と次男の『三宅』を初めて見たわけではないし、
ところ構わず始める次男の素振りはそれこそしょっちゅう見ているのに、
なぜか涙がとまりませんでした。
たぶん、次男の中の人にとっては最後の『三宅』だと感じていたからだと思います。

ようやく打ち終わり、2人が立ち上がりました。
次男はまず長男に、そしてこちらを向いて深々と頭を下げました。
顔には涙がぽろぽろと落ちていました。
しばらく泣いて、やがて「兄ちゃん」と言いました。
「Rか?」と聞くと、泣きながらも頷きます。
心底ほっとしました。
塩も線香(売ってた)も出番はありませんでした。

424: 5/5 2009/09/07(月) 13:03:50 ID:Q1v71Dj+0
次男は部屋で着替え始めたことも、リビングで歌い出したことも
その後のことも全部覚えていました。
「でも、俺がやったんじゃない」
それはそうでしょう・・・次男もそこそこ打てるようになったとは言え、
あの美しいフォームは次男のそれとはあまりに違いましたから。
どこの誰だったのかは分からないらしいです。
ただ「最初は悲しかった。でも、打ち出したら嬉しかった・・・と思う。
怖かったけど、嫌な感じはしなかった」だそうです。

念のため、翌日私の実家に連れて行き、近所のオガミさん(たぶん拝みさん?)に
見てもらいました。
「何もない。キレイなもんよ」と言ってもらい、やっと本当に安心しました。
「満足して行ってるはずや。無念が晴れたんじゃろ」とも。
「ただし、まだR坊に大きな疲れが残っとる。命が疲れとる。
ゆっくり精神を休ませなあかんよ」と、お守りをいただきました。
それはオガミさん特製のちりめんで出来た小さな袋に勾玉のような綺麗な色の石が
入れられた物でした。

長男は「なんでRより打てる俺じゃなかったんだろ?」と言ってましたが、
オガミさんは「相性もあるし、M坊よりR坊の方が単純やしのぉ」と笑ってました。
次男は達人に貸してから体の使い方がちょっと分かったと言い、
日々、素振りに余念がありません。
何かコツをつかんだのかもしれません。

終始慌てふためいていたため、後から思うと何やらおかしいことになってますが
その時は次男を失うのではと、この上ない恐怖でした。
当の本人は今日もノンキに登校しましたが。

もし良かったら、動画サイトで『三宅木遣り太鼓』『木遣り歌』で検索してみて下さい。
いくつかアップされてると思います。
上手な人の歌や演奏は胸に響くものがありますよ。

425: 本当にあった怖い名無し 2009/09/07(月) 13:11:00 ID:PkQ7xcEd0
>>425
なんか…いい話だねぇ。
車で笑える家族がいいよ。

>>418
同じことさせる可能性高いかもね。

426: 本当にあった怖い名無し 2009/09/07(月) 13:12:30 ID:PkQ7xcEd0
>>424宛ね

427: 本当にあった怖い名無し 2009/09/07(月) 13:20:32 ID:Q1v71Dj+0
>>426
ありがとう。
一瞬「死ね」かとw
笑ってたのは私はほとんど空元気でしたが、主人はほんとに笑ってましたね。
それもほんのり怖かったかも。

428: 本当にあった怖い名無し 2009/09/07(月) 13:26:32 ID:uwP0hM0LO
>>420
なんか清々しい心霊話しですねw
心霊ちょっといい話かな?

429: 本当にあった怖い名無し 2009/09/07(月) 13:36:19 ID:ND8ZMkyUO
>>422
親父さんが笑いを入れた所に生々しさを感じる。

430: 本当にあった怖い名無し 2009/09/07(月) 13:36:20 ID:Q1v71Dj+0
>>428
あ~、いい話の方がよかったのかあ・・・。
失敗しちゃいました!?

431: 本当にあった怖い名無し 2009/09/07(月) 13:44:47 ID:Q1v71Dj+0
>>429
この時点でもうオガミさんのところに行く算段もしてたし意外と冷静でした。
私は慌てるばっかりだったし、長男はやたらとテンション高かったし、
スレ立てて助けを求めようとか言い出すし・・・
この文章の裏では本当にわやくちゃでした。
一応最後まで精神病も疑ってましたし・・・

432: 本当にあった怖い名無し 2009/09/07(月) 13:54:39 ID:DKTMdJR20
怖いというより、かなりおもしろかったw

433: 本当にあった怖い名無し 2009/09/07(月) 13:59:52 ID:C2pIIxv00
>>431
いい話、ありがとう。
長男もどこかのスレでカキコしてるかもねw

436: 本当にあった怖い名無し 2009/09/07(月) 14:06:45 ID:Q1v71Dj+0
>>433
それについては最初次男自ら書いたんです。
投稿するか否かももめましたw
本人は体を貸したんだし2~3日筋肉痛に苦しんだりで
それぐらいは許されるだろうと・・・
ただ、出来上がったのが読むに耐えない文章だったので書き直しました。

434: 本当にあった怖い名無し 2009/09/07(月) 14:02:30 ID:Q1v71Dj+0
>>432
ですよね・・・orz
怖かったんですけどねぇ。

435: 本当にあった怖い名無し 2009/09/07(月) 14:05:39 ID:pkRPD2y6O
家族皆ねらーなのか?

437: 本当にあった怖い名無し 2009/09/07(月) 14:11:22 ID:Q1v71Dj+0
>>435
私と次男はこの事件きっかけです。
あのとき、いろいろ参考にしたので・・・。
水とお酒を用意するとか。
一応1ヶ月ROMりましたが、新参です。
長男はどこ住みかは教えてくれません。
3人とも基本ROM専です。

441: 本当にあった怖い名無し 2009/09/07(月) 14:24:47 ID:C2pIIxv00
>>437
>長男はどこ住みかは教えてくれません。

VIPと虹と半角だな

444: 本当にあった怖い名無し 2009/09/07(月) 15:04:57 ID:7DURt5qJ0
>>441
ダウソも入れとけw

443: 本当にあった怖い名無し 2009/09/07(月) 14:31:40 ID:FrsorIylO
なんで最初からオガミさんとこ行かなかったん?
最後に打たせてあげたいっていうのはやっぱり長男が言ったのか?
次男は乗っ取られた瞬間分かんなかったのか?
って、もう出てこんわな。あーあ。

445: 本当にあった怖い名無し 2009/09/07(月) 15:14:38 ID:5nzAFCIxO
家族一家がねらーってw
長男、虹住人にされてるしw

447: 本当にあった怖い名無し 2009/09/07(月) 17:37:38 ID:XxzdDcXT0
>>443
長男です。
打ちに行くと決めたのは俺、場所を決めたのは父。
弟は乗っ取られた瞬間を知らない。
起きたらもう自分では動けなかったみたいなんで。


弟はどっちかと言えばニコ厨、こっちはほとんど見てない。
因みに俺の住処は全部ハズレw 虹ってwww

なんかいろいろスマソかった。
でも、おかげでおかんは話のウケがよかったんで気をよくしてます。
おかんも俺も最初で最後のオカ板レス体験と思うんで勘弁。

450: 本当にあった怖い名無し 2009/09/07(月) 18:06:57 ID:ZiHCRmzJO
>>447
>>447の選択は、間違ってなくて良かった。
なんか‥久々に、良き家族の姿を見たよ。
そこら辺の小説より面白かった。
思わず「三宅木遣り太鼓」ググッちゃった。
粋でカッコいい。
息子が出来たら、是非させたいが
息子が出来る予定が、全くない‥w
これからも、親子仲良くね。

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