引用元: 「【妖怪?】奇妙な生き物が見える人【もやしもん?】」より
http://anchorage.2ch.net/test/read.cgi/occult/1233478402/
5: 本当にあった怖い名無し 2009/02/01(日) 18:14:18 ID:Y5nY07kE0
タアラさんに質問です。

あなたが見たモノの中で一番怖かったモノ
はどんなモノだったか教えてください。

あと、それとは逆に、第一印象からして
とっても素敵で印象の強かったモノがいたら、
それも教えてください。

35: タアラ ◆3I6UOpm/Uo 2009/02/02(月) 11:17:32 ID:478YsfEA0
>>5さん
一番怖かったのは、一番付き合いの長い人と初めて会った時だと思います。
(少し長くなりますよ?(苦笑))

なんせデカいですし、初めて見たのが中学生の時だったんですけど姿が獣の
形をしていてシッポが何本もある様に見えるので、最初は妖狐って居ますよね?
ナルトなんかにも出て来るけど、七尾の妖狐でしたっけ?あれだと信じてました。

学校の屋上で座ってたりよく見かける様になって、でもサイズ的にデカいし
大きいグリグリと動く目が一つしかなく、おまけに定位置にないので
それが気持ち悪くて恐怖心もあって、なるべく近づかない、絶対に声をかけない、
かけられない努力をしようと思ってたんですが、あっけない感じで;;
向こうはこっちが見えてる事を悟って、近づいてきました。
学校の行き帰りとか、思いっきり見えるところに「居るな…」と思っても、
目を合わせないで通り過ぎたり、全く気付いてないフリをしていました。

とにかくこの人は、ストーカー体質とでも言いますか…
本当にしつこかったんです。半年近く毎日必ず見える場所に現れて、何も言わずに
じっとこちらを見てる。他の妖達も居ますから、自分の部屋の中とか、それが
居ない時を見計らって相手をするという按配でした。
人目だけじゃなく、彼らの目線まで気にして生きていくってかなりしんどいな;;と
当時辟易してたのを覚えてます。

36: タアラ ◆3I6UOpm/Uo 2009/02/02(月) 11:19:24 ID:478YsfEA0
でも、どうして私がそんなに警戒したのかと言うと、前に虫を食べる危ない
タイプのが居ると書きましたが、そいつらは一切喋りません。
こちらに何かを言ってこようとする気配もなくて、見つけると
ザラザラした嫌な悪寒を感じるのですが、そのずっと付いて回ってる狐も
話しかけて来る事がなかったんです。
それまで会った妖達で、あのぐらいの大きいサイズになると単語とかでも
言葉を持っているし、こっちが見えるのに気付くとほとんど声をかけてきます。
でも、彼はそれをせずに、ただ黙ってそこに居ました。
「しゃべらず」と虫を食べる種類のに名前を付けているんですが、その頃は
あの狐もしゃべらずかもしれない、危ないなと決め付けてました。

半年近くずっと付きまとわれてまして、ちょうど夏休みがもうすぐだって辺りの
授業中にそれは起こりました。

私の席は窓際から二列目の一番後ろの席で絵に描きましたが、人より大きい
サイズで、うちの教室が気に入ってるらしくしょっちゅう現れる黒い人が、
(シッポと呼んでました。長いシッポみたいなのをいつも引きずって歩いていたんで)
先生が立ってる教壇の辺りを歩き回ってて「シッポ、そこに居ると邪魔だぞ」と
頭の中で呟くと、シッポがゆっくり机の間をこっちに歩いてい来るのを見ながら、
暑さに参ってまして机につっぷして目を閉じてたんです。
出来るなら少し寝ようと思ってました。

37: タアラ ◆3I6UOpm/Uo 2009/02/02(月) 11:21:47 ID:478YsfEA0
そしたら頭の中で「おい」と誰かに声をかけられ、シッポが直接こっちに
喋ってくるなんて珍しいと顔を上げたら、斜め前にシッポが立ってて
少し見上げて「なによ?」と、授業中だったんでホントに聞こえるか否かの
声で呟いたら、シッポが「ちがう、ちがう」と繰り返してました。
(シッポは基本文章じゃなくて、単語を連続して言う様に伝えてきます。
 でも、ほとんど声を出す時は無いです。なんかある時しか音を出しません)

その時に、シッポの声と違うのに気付いて眠気が一気に吹き飛んだ時に、
ものすごい大きい声で「答えたな!!」と叫ばれて、ヤバい、これ
シッポじゃないと、慌てて声がした窓際を見たら、窓一面でっかい目ん玉で
本気で驚いて声上げながら立ち上がったら、変に椅子を引いたもんで椅子ごと
後ろにひっくり返りました;;
(今思い出しても、顔が赤くなる程恥ずかしかった事です…orz)

すぐに先生が「どうした?タアラ、何やってんだっ!?」と慌てて走って来て
周りのクラスメイトにも、「なにしてんの?あの子」みたいな目で見られ、
とっさに「寝てて怖い夢を見たみたいです」と嘘を吐いて、先生に怒られたんですが、
その時には目玉は居なくなってて、シッポが困った様におどおどしてました。

38: タアラ ◆3I6UOpm/Uo 2009/02/02(月) 11:23:54 ID:478YsfEA0
その日は学校に居る間、生きた心地がせず帰り道でコンタクトして来るに
違いないと… 答えたなと叫ばれた声は、それまでに聞いた彼らの声の中で
一番大きくて威圧感のあるものでした。おまけに絶対に喋らないと思ってた
しゃべらずが喋ったのも自分の中ですごい恐ろしい事で、何かを食べ続けて
しゃべらずが大きくなるのはもう知っていたので、あれが育つとあの目玉狐みたく
なるのか? もし、そうだったら、あのサイズって軽く人ぐらい食うだろう…と
本気でヤバい者に関わってしまったと後悔しました。

彼らと関わり方は知ってても、よく魔よけとかお祓いとかの類の彼らとの
別れ方だったり、避け方というのは知らない時だったので、頭の中は「どうしよう」
しかなく、狐が出たせいなのか学校内に居るシッポ達もその日は一日大人しくて
その姿を見て、あの狐は彼らより上の存在なんだろうなと感じ、逆に学校に長居して
あの目玉が入って来る様なことになったら、シッポが食われちゃうかもしれないし;;と、
八方塞な状況で、放課後靴履いて外見て狐が居ないのを確認してダッシュで
家まで走って帰って、自分の部屋の窓のカーテン閉めて外を見ない様にして
部屋の中で「来るなよ;;」と思いながら怯えてました。

39: タアラ ◆3I6UOpm/Uo 2009/02/02(月) 11:27:54 ID:478YsfEA0
それからしばらくその狐は姿を見せなくなりました。
(私が余計なところには一切寄らずに過ごしてたせいもあったんですが;;)
あいつはなんだったんだ;;と拍子抜けした時には夏休みに入ってました。
押し花を10種類作る宿題が出てたんで、近所をうろうろして花を集めたり
しながら小さいのと遊んでたんですが、近所の草原だけだと限界があったんで
自転車で一時間ぐらい走った場所にある、多摩川が流れてる森みたくなっている
場所があり、そこに行きました。

その場所は犬の散歩とか、そういうのでしか人が来ない所です。
そこでしゃべらずの結構育っているのを見つけてしまい、早々に集めるもの
集めてとっとと退散しようと花をブチブチ切ってたら、そのしゃべらずが
すぐ傍に居て口を開けてパクパクしてるのを見て焦り、ヤバいと思って
持ってるもの全部ぶん投げて走りました。

それまで知ってたしゃべらずの移動速度はすごく遅かったんで、逃げれると
思ったんですが、そいつはタコみたいなわらわらした足をいっぱい出して
本気で走らないと追いつかれる様な速度で追いかけて来まして、これは
本気で不味いと、人目に付く通りまで走ろうかと思ったんですが、そうすると
通りすがりの誰かに何かするかもしれないから出来ないし;;と、必死で
どうすりゃいいのか考えあぐねて居る時に、遠くの建物の上で座ってる狐を
見つけて、笑ってる様に見えました…
ダブルパンチってこの事ですか?;;と、絶望したのを覚えてます。

40: タアラ ◆3I6UOpm/Uo 2009/02/02(月) 11:29:40 ID:478YsfEA0
私は運動苦手なので、走るっていっても限界があります。
もうダメだ、絶対無理だ、殺されるってか食われるの? ただでもおかしい子って
見られてるのに、こんなところで変死体で見つかったらシャレにならんと本気で思って
助けてと叫んでたと思います。
(もし見てた人居たら、私ガチで変質者だと思います)
その走ってる最中に、ぶわっと何かやわらかい束みたいなのが体にぶつかって
通り過ぎて行ったのを感じて転び、すぐに後ろを振り返ったらあのデカい狐が
しゃべらずを食ってました。

食われるとか殺されるって本気で感じて、窮地に陥ったのはこれが最初で最後です。
この時程、本気で怖かったのもありません。
そして、大きいのがしゃべらずを食べる=退治してると確信したのもこの時です。

この時の狐はまだあまり言葉を持ってませんでしたが、少しづつ話をしていき
今では割りとよく喋る様になってます。
この時のしゃべらずは、小さい時にうちの周りに居たやつで、私は気付いて
無かったのですが、私の近くをうろうろしてたらしいです。その時に狐は
私を見つけて興味を持ったらしく、姿を現したってオチでした。

41: タアラ ◆3I6UOpm/Uo 2009/02/02(月) 11:31:19 ID:478YsfEA0
その人とは一番付き合いが長くて、子供の頃いじめられたり、そういう奇行が多かった
私はあまり友達が居なかったので、よく話をしてました。
彼は人間があまり好きじゃないです。自分達の姿が見えないし、感じようともしない。
木でも山でもなんでもいいんですけど、それぞれに色んな者達が暮らしているのに
それに断りもなく、人間は入り込んで来て騒ぎ立てる生き物だからみたいです。
一番初めの頃、彼は私の事も嫌いだった様に思います。
でも、彼らには同属同士で食い合ったり、もめたりがありません。
大きいのが小さいのを食べたりはありますが、小さいの同士で食い合ったりとかが
ないんです。つまり、いじめとかそういう概念がありません。
同族に嫌悪感とかを持つ事がない世界みたいなので、同じ人間からいじめだったり
からかわれてる私を見て、彼は不思議に思ったようです。
私も悪かったんですが、中学辺りは本当に人に関わらない様に過ごしてました。
小学校の時に、何も居ないところで話をしてるとか、笑ってるのを見たとか
あいつ気持ち悪いからと、中学に上がっても同じ小学校の同級生達が触れ回って
いましたんで(苦笑)

だから同じ種族なはずの人間から遠ざかる様に生きてる私を見て、彼は同情というか
仕方がないから相手してやるかって按配で傍に居たんだと思います。
逆に言うと彼と知り合ってからは、そんなに寂しい思いをした記憶がありません。

42: タアラ ◆3I6UOpm/Uo 2009/02/02(月) 11:32:00 ID:478YsfEA0
良い出会いではあったんですが、恐怖度マックスだったんで書いてみました。
ものすごく長いですね;; すいません。
話を聞きたいという人が多かったんで、少し詳しく思い出しながら書いて
みました。一番怖かった思い出です。

とても素敵で印象が良かったものも、これから書きますね。

43: 本当にあった怖い名無し 2009/02/02(月) 11:37:21 ID:DXx1PQE+0
詳しく書いていただいてありがとうございます。
ずっと妖怪がみたい!と思ってたので少し羨ましいです(見えないから言えることですね、ごめんなさい;)
いじめが不思議ってのにはちょっと意外でした。

ところで多摩川沿いとあったのですが

45: タアラ ◆3I6UOpm/Uo 2009/02/02(月) 11:50:27 ID:478YsfEA0
>>43さん
いいえ、自分一人が見えてると面倒な事が多いですが
もし全員が見えてたら、面白い世界だと思いますw
多摩川って今書いて気付きました。所在地わかってしまいそうですね(苦笑)
私は東京に住んでますよ、都下ですがw
都会の方にも数は少ないけど結構居ます。
店先で手招きするというか、わらわらしてたり、不思議な動きをしてたり
呼び込み?と思うんですが、そういうおかしいのが居るお店は込み合ってます。

有名なラーメンのお店に食べに行った時に、5匹ぐらいで不思議な踊りを
踊ってる500のペットボトルぐらいのサイズのが居た時がありました。
並びながら雨乞いみたいだなぁと思ってずっと見てました。
その5匹は人型で、体毛が少なくてマッチ棒みたいな手足をしてて
目はどこにあるか判らなかったですが、口っぽいのから音を出してました。

あの種類はそんなに見ないですが、数匹で居ることが多いです。
都会とか田舎とか限定じゃなくて、割とどこにでも居ますよ~

46: タアラ ◆3I6UOpm/Uo 2009/02/02(月) 11:54:13 ID:478YsfEA0
>>33さん
ありがとうございます。長い文章って書くの苦手なものですから
読み直しつつやってるので、時間かかってしまうと思います;;
判りにくかったらごめんなさい…orz

>>34さん
トリップって名前の横に出てるこの記号のことなのですね。
このまま変えずにいきます。教えてくれてありがとうございましたw

47: 43 2009/02/02(月) 12:08:33 ID:DXx1PQE+0
招き猫ならぬ招き妖怪?w
自分は東京に行ったら必ず行くラーメン屋があります。
そこはおいしくていつも混んでるんだけど、
そのお店の前でも踊ってるのかと思うと何か和むw

48: 本当にあった怖い名無し 2009/02/02(月) 12:57:15 ID:NFRU5XMX0
>>46
読み応えある興味深い話ありがとうございました!

ただ「人」という表現はどうかな?と思いました。
リアルな人間や友人かと勘違いして混乱した箇所が失礼ながらあったもので。
基本、彼・彼らとか♀体が確認出来た場合だけ彼女とか。

49: タアラ ◆3I6UOpm/Uo 2009/02/02(月) 13:08:52 ID:478YsfEA0
>>48さん
あ、ごめんなさい;; 判りにくかったですね;;
これからは妖と書く様にしますね。
今、印象が良かった妖のことを書いてるんで、直します~

50: 本当にあった怖い名無し 2009/02/02(月) 13:10:20 ID:3q7mKieL0
タアラさんが「あの人」「この人」って呼んでるならそれでいいんじゃない?
まぁカギ括弧つけてくれると分かり易いとは思うけど。

タアラさんに質問なんですけど、「その人」たちは見えてない人間と物理的に
接触するとやっぱりすり抜けるんですか?それとも避けるのかな?
その人自身に体温なんかはあるんですか?視覚以外で感じることは可能?

51: 5 2009/02/02(月) 13:24:58 ID:3vRT3z0P0
質問に答えてくださってありがとうございました。
感動しました!

52: タアラ ◆3I6UOpm/Uo 2009/02/02(月) 14:23:05 ID:478YsfEA0
>>50さん
もう少し判りやすいように、次書いてみました。

物理的な接触もあると思います。
ただ、普段は通り抜けるって感じで、道の真ん中にシッポが居ても
子供とか大人とか、シッポを通り抜けて歩いて行きます。
(あの子らはのんびりしてるんで、避けるってことはしません)
うちに入って来る様な小さいのは避けて歩いてるのも居ますが
触れても多分感覚は得られないと思います。
(私自身、彼らに触れられる事は今はもう稀ですから)

目玉狐と書いてる妖は、付き合いが長いせいなのか触ろうと思えば
感覚はあります。温度の様なものは感じたことはあまりないですが
シッポの体に手を突っ込むと、少しひんやりする感じはあります。
視覚以外でも感じる事は多いですよ。音とか声は聴覚になると思いますしね。

53: タアラ ◆3I6UOpm/Uo 2009/02/02(月) 14:24:37 ID:478YsfEA0
>>5さん
>あと、それとは逆に、第一印象からして
とっても素敵で印象の強かったモノがいたら…

これは唯一ちゃんとした人間と同じ姿で、長い時間を過ごしていた妖の
話を書こうと思います。
その妖に会ったのは成人してからでした。
場所などの名称は出すのをやめます。多分、調べれば出て来る名前だと
思うので… そこで暮らして今も奉っている地元の方達の気持ちを
裏切ることになりますのでご容赦下さい。

夏に地元の子供会などでボランティアをしている友人に誘われて
キャンプに行った時の話です。
田舎の川でニジマスを取ったり、バンガローとかで泊まってバーベキュー
とか出来る場所ありますよね? そこに滞在しながら、3泊4日とかで
集団で泊まりに来る子供達の面倒を見るという仕事で、ボランティア
だからお金は出ないんだけど、人手が足りないからと2週間ちょっと
お手伝いすることにしました。

54: タアラ ◆3I6UOpm/Uo 2009/02/02(月) 14:25:13 ID:478YsfEA0
もともとああいう大自然はすごく好きで、子供も嫌いじゃないので
面白そうと思って行ったのが始まりだったんですが、その川原には
30棟ぐらいバンガローがあって、夏の時期だけ営業してるお店でした。
川のすぐ後ろに山があって、滞在して数日ですぐに山に何かが居るなと
感じていたんですが、初日から四日間は子供達と一緒だったんで探索は
せずに気にしながらすごしていました。
(山に入ると子供も付いて来るので危ないと思ったからです)
その第一弾の子供達が帰った日のお昼過ぎに、一人で山に入ってみました。
山道で散歩用の道があったんで、ペットボトル片手に歩いていたんですが
歌みたいなものが聞こえて、呼ばれてる感覚があったので向こうも気付いた
かな?と。子供達が来るのは二日後で、次の日は一日休んで自由にしてて
いいよと言われていたんで、面白いのが居たら明日一日退屈しないで
済みそうだっていう軽い気持ちでした。

55: タアラ ◆3I6UOpm/Uo 2009/02/02(月) 14:26:11 ID:478YsfEA0
散歩道になってる山道をぐるっと歩いて戻って来たんですが、歌が
聞こえる方向が違うなと思って、他の道を探しました。
山道の途中で、道から逸れて明らかにそれ斜面登って山の中だろ?;;って
細い小道があって、覗いてみると奥まで結構続いてそうな道で
なんて言えばいいのか判らないんですが、太いロープが地面にクイ?の
様なもので打ち付けてあって、それを伝って少しづつ上っていける
細道といえば言いいのか… うまく書けなくてすいません;;

でも、そのロープを伝いながら、斜面がきつい所は上っていき~と
進んで行くと、山の斜面と書けばいいのかな。
細い道なんですが、踏み外したら下に落ちるなっていう場所に出ました。
それまで木が生い茂ってて暗い中進んでいたので、その明るい道に出て
太陽がすごい眩しくて、結構な高さまで上ってた事に気付きました。
その道の先に何か居る気がして進むと、すぐに小さい祠の様なものが
あって、二匹の狐の像と、小さいですが鳥居もちゃんとありまして
来るのに大変な場所ですが、供えられてるお水とか物を見ると誰かが
ちょくちょく来てお世話してるんだなぁと思いました。

56: タアラ ◆3I6UOpm/Uo 2009/02/02(月) 14:27:21 ID:478YsfEA0
鳥居の横に小さいみかんの木が生えてて、木陰を作っていたので
そこに座ってペットボトルの飲み物を飲みながら涼んでました。
影に入るとすごく気持ちの良い風が吹いて来るところで、周りの山なんかが
一望できる景色が綺麗な場所で、少しそこでボケーっとしてました。
「帰りなさい」という声が聞こえた気がして、振り返ったのですが姿は無く、
まさか狐の像が喋った?と青ざめたんですが、まさかなぁ…とそのまま
また前を向くと、「雨が降るから帰りなさい」とまた声が聞こえて、
立ち上がったんですが姿は見えなくて、空を見ても明るいし「雨なんて
振るわけないじゃん…」と呟いて、でも帰れって言ってるって事は
歓迎されてないんだなと少し凹んで帰ろうとしたら、鳥居の奥の狐の像の
横に、着物の様なものを着てる人の姿がありました。

完全に人間に見えるタイプの妖は滅多に見かけないです。
それまで一度しか見た事が無かったんで、幽霊だと思って慌てふためいた
のですが、その私を見てその妖は笑って「雨が来るから早く帰りなさい」と
言って姿を消しました。
ゾッとしたとかそういう悪い感覚は無くて、酷く驚きはしたものの
その声とか見た目にとても優しい感じがあったので、そのまま来た道を
戻って下に戻りました。あの人が言ってた通りに泊まっているバンガローに
戻ってすぐに夕立が来て、一緒に泊まっていた友達に良いタイミングで
戻って来たねと笑って言われて、本当に雨降ったな…と明日お礼を言いに
行こうと思いました。

57: タアラ ◆3I6UOpm/Uo 2009/02/02(月) 14:28:13 ID:478YsfEA0
その日の夜にみんなでご飯を食べている時に、そこのキャンプ場を経営
されてる方に、あの祠の話を聞きました。
良い年の陽気なおっさんで、お酒飲みながら話してくれたんですが、あそこは
山神様を奉ってる場所で、結構古くからあると。
そこは夏の時期はキャンプ場なんかで人が賑わうんですが、冬になると雪が
酷くて閉ざされてしまう土地で、春が来て暖かくなってから、夏の終わりの
キャンプ場を閉める間の期間、無事と繁栄を守ってもらってる神様なんだと
話していました。

神様という類の者も存在するんだ?と、一応人間の姿をしてたし
神様って呼ばれる類は人の形をしているのか?と当時思ったんですが、
それはないみたいです。
山に住んでいた妖を勝手に人間が奉っているだけという感じのようで
その妖は神様というものは知らないと言ってました。

58: タアラ ◆3I6UOpm/Uo 2009/02/02(月) 14:29:11 ID:478YsfEA0
その次の日、雨のお礼を言いに売店で売ってた酒饅頭を持って行きました。
私が見える事に驚いてましたが、すぐに受け入れてくれて変わった人も
居るもんだと笑ってました。
容姿は30才ぐらいの男性に見えました。髪は少し長めで真夏なのに、分厚い
着物のような物を来て、足には足袋と藁で編んだ草履を履いてました。

どうしてこの妖が人間の着るものを纏っていたのかというと、そこは夏の
終わりに名前は書きませんがお祭りをやります。
冬になると人が全く来なくなる場所なので、山神様が寂しかろ、寒かろうと
せめて寒さはしのげる様にと、そのお祭りの時に藁で編んだ草鞋とか布の
厚い足袋、あと着物とかを作ってその祠に置くのが慣わしで、そのお祭りの
時に、去年置いたものと新しいものを取り替えるんだそうです。
(衣替えと地元の人は言ってました)
あの妖が着てたのは、そのお祭りの時に人間が持って来るものだったんです。
作られた着物とかはサイズはすごく小さいです。人形サイズです。
二体ある狐の像も、帽子の様なものと、肩に藁で作った肩掛けみたなのを
付けてました。

59: タアラ ◆3I6UOpm/Uo 2009/02/02(月) 14:30:20 ID:478YsfEA0
話を聞いてて、だからあの妖は人間の容姿をしてるんだ…と納得しました。
私はあの妖を、夏の幸せと書いてナユキ様と呼んでました。
地元の人が夏の時期に~と話していたんで、安易ですが名前を持たない
妖をそう呼ぶ事にしました。

すごく穏やかな人で、場所のせいだけじゃなくて、ナユキ様の傍に居るから
風とか空気が澄んでるんだろうなぁと感じたものです。
(前に書いた目玉狐は存在感がすごいというか;; 一緒に居て和むって
 感じるタイプじゃないもんで…)
その年はお祭りには参加出来なかったのですが、次の年はお祭りまで居させて
もらって、4年間夏はそこですごしました。
ボランティアなんでご飯は食べれますが、その月はバイトが出来ないんで
7月までに大目に働いて少しお金を貯めて、なんとか9月はしのごう;;…と、
頑張ってました(苦笑)
私は実家暮らしで、家賃とか少なかったんで出来た事だと思います。

60: タアラ ◆3I6UOpm/Uo 2009/02/02(月) 14:31:11 ID:478YsfEA0
でも、4年目にその山に道路が通る工事の日程が決まって、祠を別の近くの
山に移す事になりました…

最初は祠が潰されるんじゃなくて、移動になるならまだいいか…と思ってた
のですが、それは違いました。
ナユキ様は移る気などありはしないと。
そこで、ナユキ様がどれだけの長い時間をあの場所で過ごして、祠に来る
人間たちをずっと見てきたのか思い知らされました…

背負われてた赤ん坊が、自分の足で立って祠に来る様になって、一生懸命
他の人間の真似をして小さい手を合わせていく。
でも、その子供が少しすると自分の子供を連れて来て、最後は「孫」だと
言ってまた小さい子供を連れて来てしわがれた手を合わせて、そしてその人間は
来なくなる=死んでしまう。
でも、連れて来た子供がまた大きくなってと、えんえん彼らを見て来たと。
私がそこで見た壮大な景色も、ナユキ様からすれば随分と変わったそうです。
確かに、その場所から見える山のいくつかは斜面が削られて茶色い地面が
出ているものも何個かありました。
あの場所でずっと彼は過ごして来たという重みというか、そういうものを
感じました。

61: タアラ ◆3I6UOpm/Uo 2009/02/02(月) 14:33:16 ID:478YsfEA0
人間が手を合わせるという行為が、どういう意味を持つのかナユキ様には
判らなかった様ですが、多分とても愛らしく見えてたんだと思います。
それで自分達が着ている衣と似たものを置いていく。
着てみたのは妖ら特有の興味本位からだと思いますが、きっとナユキ様は
それが気に入ったんだと思います。

祠を移動してもナユキ様は来ない。
山が無くなるなら、共に消えるだけという考え方は、人間の私が何を言っても
変わるものじゃないのは見えてました。
地元の人はそんな事知るはずもなく、祠を移動する前の最後のお祭りの日に
酔っ払って大宴会みたくなるのですが、そこで地元の人が祠もだいぶ古くて
ガタが来てるから、移動する時に綺麗に修繕して奉ることとかを話していて、
山神様も綺麗な社になるから、喜んでくれるだろうと…
笑いながら楽しく話してる姿を見て、悲しいというか悔しいというか
なんとも言えない気分になったのが忘れられません。

62: タアラ ◆3I6UOpm/Uo 2009/02/02(月) 14:34:20 ID:478YsfEA0
目玉狐と書いてる付き合いの長い妖は、よく「人は勝手な生き物だ」と
私に言います。目玉狐と書いてますが、本人は狐というものを知らんと言うので
容姿のイメージからイヌガミって呼んでるんですが、その時ほどイヌガミの
言葉が痛いと思ったことはありませんでした…
人間の勝手な理由で山を無くして、祠は移動すれば大丈夫、逆に綺麗になるから
大喜びだと笑って言う。あれほど、自分が人間であることが嫌に感じた事も
無かったです。でも、それが自分の世界なんだと思い知りました。

ナユキ様はそんな風に捕らえてないと、地元の人に酔った勢いで言ってやろうかと
一瞬思ったんですが、そんな事をしても悲しむのはナユキ様たち妖で、何かを
変える事なんて出来る訳もないしと言葉を飲み込みました。
イヌガミはこの事を「バカのやる事」と私を笑います。
私は馬鹿だから、無駄に関わって気持ちを濁したり、同じ人間に不信感を与えると。
それで泣いてたら世話はないって考えのようで、まぁ私もその通りだなと思う
部分です。

63: タアラ ◆3I6UOpm/Uo 2009/02/02(月) 14:34:58 ID:478YsfEA0
雪が降るとその川のある場所は、川の上にある大きな橋と道路まで来ることは
出来ますが、下に降りたり、山に登ったりは出来ない場所になります。
雪に閉ざされたこの場所の景色も綺麗だとナユキ様は言ってたので、今年の
終わりの12月にまたここに来るよ彼に言いました。
一緒に最後雪景色も見たいと思ったからです。でも、山は人には登れないと
言われて、それでも必ず来るからと言った私に、来たらすぐに判ると言いました。
多分、判る何かを伝えてくれるという意味に受け取ったんですが、その時に
姿を見るのはこれで最後になるんだろうなぁと感じました。
その予感は当たって、年末の休みの時期にそのボランティアを誘ってくれた
友人に頼んで雪の中、その川のある橋に行きました。
あそこに最初に行った時に聞こえた、歌の様なものが聞こえて友人が居るのも
関係なく泣いて帰って来ました。

64: タアラ ◆3I6UOpm/Uo 2009/02/02(月) 14:37:13 ID:478YsfEA0
その次の年の夏に、またその川に行ったんですが、そのキャンプ場も工事の都合で
閉鎖されて、近くの川の別の所に宿泊しました。
移動された祠にも行きましたが、ナユキ様の姿はやはり無かったです。
小奇麗になった祠に、前と同じ用に着物とかが積んでありました。
もう着る人が居なくなったその場所で、丁寧に畳まれた小さい着物を見て
泣きたくなりました。
前の場所よりも、もっと人が来易い場所になってて、鳥居も前からあったのと
新しく増やしたのとで何段かになってて、前よりも立派になってましたが
もの悲しいというかなんというか、意味が無い様に感じたのを覚えています。
その年で私はそこに行くのをやめたんですが、今も地元の人はそこに毎年新しい
衣を奉納して一年の無事を祈っているんだと思います。

65: タアラ ◆3I6UOpm/Uo 2009/02/02(月) 14:38:20 ID:478YsfEA0
よく家に入ってくる小さいのとか近所に居る妖たちで、見てて面白いと思っても
ずっと一緒にいれればいいのに…と感じたのはナユキ様が初めてでした。
とても懐が深いというか、神様と呼ばれる尊い存在があるとしたら、多分
彼の様な感覚を持つ者なんだろうなぁと今でも思います。
優しくてすごく暖かい感覚を持っている妖でした。
長い年月を人間と関わってきた妖だったせいか、口数は少なかったですが
割と会話が成り立つ珍しい妖でもありました。
不思議なのは容姿はすぐに思い出せるのですが、その顔が見えないことです。
口元で柔らかい笑みを浮かべていたのは思い出せるんですが、目がどんな感じ
だったか(例えば一重だとか二重だとか)、全体的な彼の顔の情報だけが
スッポリと抜け落ちてる様な感覚です。

どうしてかは判らないですが、彼の様な妖には今後二度と会えないだろうなと
頭のどっかで感じる自分が居ます。理由はわからないですが…
一番思い出に残ってる印象の良い妖の話です。判りにくかったらすいません;
そして長く書いてごめんなさい…orz

66: 本当にあった怖い名無し 2009/02/02(月) 14:39:39 ID:l68HcunI0
なんか夏目の露神様を思い出したよ。
読んでて泣けた・・・

67: 本当にあった怖い名無し 2009/02/02(月) 14:50:48 ID:dJiGqhaeO
なんだかミギーみたいだねイヌガミ。
昔はタイラ見たいに見える人いっぱいいたんだろうなぁって思う。

68: 本当にあった怖い名無し 2009/02/02(月) 15:37:35 ID:uObMpynEO
>>66
自分も露神様思い出した 切ないなぁ
思いや信仰みたいな物が関与するのかな
九十九神みたいなのも見えたりしますか?>たあらさん

73: タアラ ◆3I6UOpm/Uo 2009/02/02(月) 16:22:36 ID:478YsfEA0
>>68さんと66さん
夏目の露神の話を見た時、久々にナユキ様を思い出して、そこで顔が
見えない事に気付いたんです。
ナユキ様が消えたのがいつか判らないですけど、あんなふうに幸せな
感じで消えてくれてたらいいなって思えて、主人居たんですが号泣しました;;

夏目を見てここに書き込んだというのは最初に書いたと思いますが
夏目の作者さん?って、もしかしたら少し見える人なんじゃないかなぁと
感じたからです。彼らの容姿とかは全然違うし、あんなにコミカルでは
ないのですが、脚色して書いたらあんな世界になりそうだなぁと。

九十九神というのは見た事ないと思いますが
信仰されたり、奉られたりしても、その妖に興味が無ければ
それまでという気がします。
ナユキ様はそれが元で人間が気にいって、その場でずっと眺めて
ましたが、だからと言って願いを聞いてあげたりはないですから。

でも、子供の時に山神様を見たと言ってるのを死んだ祖母から
聞いたとか、子供の時に見た気がすると言ってる人が何人か居たんですが、
迷子になってた時に見たって話が多かったです。
あと、夏目の露神様を見た女の人の様に、みかんの木の横に立ってらっしゃる
気がしたとか、そういう話でした。

あの地域で山神様=ナユキ様を見た人は多かったです。

74: タアラ ◆3I6UOpm/Uo 2009/02/02(月) 16:29:01 ID:478YsfEA0
>>67さん
ミギーが何か判らないんですけど、似てますか?w
あんなに大きい感じの生き物なんでしょうか?

最初は寡黙な感じだったんですが、私が暇つぶしであれこれ話しかけてたせいか
今も話友達として一緒に居ます。
言葉はそんなに多くないし、優しさってものは多分あの人にはないんで
凹んでたりすると余計に凹まされる様な妖ですが、逆にその厳しさみたいな
部分がいい教訓になってたりもします。

他のサイトのお勧め記事(アンテナに飛びます)